神戸百年記念病院 麻酔集中治療部・尾崎塾 尾崎孝平
⒉ 祈る
ICUでは重症患者を扱うために、集中治療医は常にベストな治療の模索している。そのためにEBM(Evidence based medicine)が採用され、リスクを推量し、患者管理はできるだけ科学的に進められている。しかし、この科学的根拠はあくまでも統計上の話であり、成功するとは断定できない部分が必ず残る。実際に、ベストであると判断した治療が功を奏さず、患者が死の淵を彷徨することもしばしばである。
このようなとき、近頃の私は知らず知らずに「ICUの神様」に祈っている。以前の私が祈るというのは、「宝くじが当たって欲しい」から刹那だけ手を合わせるという程度であったが、このような祈りではない。神に縋って「お願い,お願い」と言うわけでもなく、「冷静に」に祈っているのである。むしろ、非科学的にICUの神様と交信していると言った方が正確かもしれない。
◆ 今、私は精一杯のことをしているのでしょうか
◆ 患者のためになすべきことで、忘れていることはないのでしょうか
◆ ICUの神様に恥じるような医療を行っていないでしょうか
ご存じならば思召しあれ
そして、患者が元気に回復すると、神に感謝し、本当に心の中で謝辞を述べた。そんなことを繰り返すうちに、ICUには神様がいると自ら信じようと思うようになったのである。そして、ICUの神様はいつも貴方を見ていますよとICUにスタッフ達にも言っている。