2011年に発生したCO2ボンベ誤認による医療事故で、当該病院はCO2専用アウトレットを手術室に設備し、医療用CO2流量計を使用するシステムを構築しました。さらに流量計からは、CO2と識別される専用コネクターで接続できる医療機器にのみCO2が送気されるデバイスを使用し、安全を確保していると聞いています。
しかし、中小の病院では壁内配管まで設備することは経費的にも困難です。さらに使用量の少ない病院では、需要に見合うシステムもまだ市場に出ていないが現状です。
そこで、当院では内視鏡室に限定した室内システムを構築しました。設備投資も安価で、事故防止策としても効果的と考えられますので、紹介致します。
①当院の内視鏡室は5ベッドです。上部消化管内視鏡検査に比較して、CO2を使用する大腸内視鏡はそれほど多くないという事前調査から、まずCO2を使用するベッドを隣接する2ベッドに限定しました。
②隣接する2つの部屋の隔壁部分にメインとサブのCO2ボンベを2本配して、これをガス供給源として、片側が空になった場合でも、検査中にガスが途絶しないようにしました。
2本のCO2ボンベには、壁面に固定した切り替え装置からそれぞれのボンベまでヨーク弁コネクターが出て、これらがCO2ボンベに接続されます。片側が消費された場合には、切り替えレバーを回転するだけで瞬時にボンベが切り替わる構造です。
各ボンベの内圧は切り替え部分の左右それぞれに圧力計が設けられ、そのゲージから認知できます。
③切り替えレバーの上部には圧力調整器があり、それ以後の配管圧をダイヤル式のハンドルで調整できるようになっています。しかし、実際には最初に一度調整すれば、ダイヤルを触ることはなく、圧力の一定に維持され、圧力を確認するのみで、特別に圧力調整をする必要はありません。
④その後、配管はT字型継手を介して2系統に分かれ、隣接する2つの内視鏡室にガスを同時に供給できるようになっています。内視鏡で使用する流量では、2系統同時に使用しても、減圧域の圧力で流量が不足することはありません。そして、それぞれの先には、壁面に固定された医療用のCO2流量計が配置されています。
⑤流量計には樹脂ワイヤー入りのチューブがタイガンテープで強固に接続され、樹脂ワイヤーチューブ先端には、ねじ式のコネクターが同じくタイガンテープでしっかりと固定されています。そして、チューブ先端には、「二酸化炭素」、「CO2」と視認しやすい字で書かれた赤いタグが付けられています。
⑥隣接する内視鏡室にも、T字継手から分岐した片方の系統が壁面に沿って配管され、その先には④⑤と同じシステムが壁面に固定されています。
この室内配管システムは、設置工事を含めても決して高額でなく、大きなスペースを必要としません。ガス使用量の多くない施設、大規模な改修が困難な施設などに対して、よい適応があると考えます。